パワハラ

パワハラ防止法が成立しました。

パワハラ

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律により、規定されました。
【施行日 令和2年6月1日、中小企業は令和4年4月1日(令和4年3月31日までは、努力義務)です。】

職場におけるパワーハラスメントの内容(法第30条の2第1項)

職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

【職場におけるパワハラの定義】(第22回労政審議会雇用環境・均等分科会「令和元年11月20日」資料2-1より)

職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③の要素を全て満たすものをいう。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには、該当しない。

「職場」とは、労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については、含まれる。

「労働者」とは、正規雇用労働者のみならず、パートタイム労働者、契約社員等の非正規労働者を含む雇用する全ての労働者をいい、派遣労働者については、派遣元事業主だけなく、派遣先事業主も雇用する事業主とみなす。

「優越的な関係を背景とした」言動とは、行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われる者を指し、以下のようなもの等が含まれる。

  • 職務上の地位が上位の者により言動
  • 同僚又は部下により言動で、言動を行うものが業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該協力が得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
  • 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに事業主の業務上必要がない、またはその態様が相当でないものを指し、以下の者等が含まれる。

  • 業務上明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適当な言動
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動
    ※この判断にあたっては、様々な要素を総合的に考慮することが適当である。また、その際には、個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の太陽党の相対的な関係性が重要な要素となることについても、留意が必要である。

「労働者の就業環境が害される」とは、当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生ずることを指す。
※この判断にあたっては、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度

パワハラの6類型と具体例(第22回労政審議会雇用環境・均等分科会「令和元年11月20日」資料2-1より)

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
    【該当すると考えられる例】

    ・殴打、足蹴りを行うこと。
    ・相手に物を投げつけること。
    【該当しないと考えられる例】
    ・誤ってぶつかること。

  2. 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)
    【該当すると考えられる例】
    ・人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向、性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
    ・業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
    ・他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
    ・相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メールを当該相手を含む複数の労働者宛に送信すること。
    【該当しないと考えられる例】
    ・遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度厳しく注意をすること。
    ・その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
    【該当すると考えられる例】
    ・自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
    ・一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。
    【該当しないと考えられる例】
    ・新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
    ・懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。

  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
    【該当すると考えられる例】
    ・長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
    ・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
    ・労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。
    【該当しないと考えられる例】
    ・労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
    ・業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。

  5. 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
    【該当すると考えられる例】
    ・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
    ・気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。
    【該当しないと考えられる例】
    ・労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。

  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
    【該当すると考えられる例】
    ・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
    ・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。
    【該当しないと考えられる例】
    ・労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
    ・労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。

事業主等の責務

事業主は、優越的言動問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる措置(広報活動、啓発活動その他の措置)に協力するように努めなければならない。(法第30条の3第2項) 

事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない。(法第30条の3第3項)

労働者の責務

労働者は、優越的言動問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置(法第30条の2の規定による雇用管理上の措置等)に協力するように努めなければならない。(法第30条の3第4項)

事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し雇用管理上講ずべき措置の内容

(第22回労政審議会雇用環境・均等分科会「令和元年11月20日」資料2-1より)

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
    職場におけるパワーハラスメントの内容及び職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
    職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

  2. 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
    相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
    相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等も踏まえ、相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。

  3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
    事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
    職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害を受けた労働者(以下「被害者」という。)に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
    職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。
    改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。

  4. (1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置
    職場におけるパワーハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該パワーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれるものであること。
    労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたこと(以下「パワーハラスメントの相談等」という。)を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

厚生労働大臣の助言、指導及び勧告並びに公表

◎厚生労働大臣は、この法律の施行に関し必要があると認めるときは、事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができる。(法第33条第1項)
◎厚生労働大臣は、第30条の2第1項及び第2項の規定に違反している事業主に対し、法第33条第1項の規定による勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わないときは、その旨を公表することができる。(法第33条第2項)

◎ハラスメントの防止には、当職が執筆(共著)に担当しました
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