働き方改革関連法への対応

「働き方改革」の基本的な考え方

  • 日本経済再生に向けて、最大のチャレンジングな働き方改革。働く人の視点に立って、労働制度の抜本的改革を行い、企業文化や風土も含めて変えようとするもの。働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにする。

  • 働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段。生産性向上の成果を働く人に分配することで、賃金の上昇、需要の拡大を通じた成長を図る「成長と分配の好循環」が構築される。社会問題であるとともに経済問題。

  • 雇用情勢が好転している今こそ、政労使が3本の矢となって一体となって取り組んでいくことが必要。これにより、人々が人生を豊かに生きてゆく、中間層が厚みを増し、消費を押し上げ、より多くの方が心豊かな家庭を持てるようになる。

※「働き方改革関連法」 正しくは、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。

主な内容

時間外労働の上限規制や、高度プロフェッショナル制度の創設、雇用形態にかかわらない公正な処遇の確保等が盛り込まれ、雇用対策法の改正、労働基準法関連として長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方実現に向けた改正等、労働安全衛生法関連として産業医・産業保健機能の強化等、パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法関連として、不合理な待遇の禁止(均等待遇是正の明確化)等の改正が行われた。

※「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令等の整備に関する省令」(労働基準法施行規則等)により、労働条件の明示方法、労働基準法第18条2項等に規定する労働者の過半数を代表する者について、また、清算期間が1か月を超えるフレックスタイム制の協定で定める事項ついて、時間外労働の上限規制、年次有給休暇に関して等の改正が図られた。


1.時間外労働の上限規制 [2019年4月1日施行・中小企業は、2020年4月1日]

主な内容

原則

  36協定で定める時間外労働の限度時間は、1か月45時間、1年間360時間


特別の事情がある場合(例外)

①時間外労働、1年間720時間
②休日労働+時間外労働、1か月100時間未満
③休日労働+時間外労働、2か月ないし6か月それぞれに於いて1か月平均80時間以内
④1か月45時間を上回る回数は年6回まで


36協定の記載事項が見直され、様式が改正されました


次の事業、業務については、時間外労働の上限規制の適用除外、適用猶予・緩和となりました。

 適用除外

①新たな技術、商品または役務の研究開発に係る業務

 猶予・緩和

②工作物の建設の事業
③自動車の運転の業務(事業でないことに注意)
④医業に従事する医師
⑤鹿児島県および沖縄県における砂糖を製造する事業 


2023年4月より、月60時間超の時間外労働に関する割増賃金(5割以上)の中小企業への適用。


2.年次有給休暇の年5日の時季指定義務 [2019年4月1日施行(中小企業も該当します。)]

主な内容

年次有給休暇の法定付与日数が10日以上の労働者を対象に、年5日の時期指定して取得させることが使用者の義務となりました。
付与した日から1年以内に5日、取得させる必要があります。



パートタイム労働者など、所定労働日数の少ない労働者も、該当する場合があります。

表の赤字の部分が該当となります。

週所定労働日数 1年間の所定労働日数 雇い入れの日からの継続勤務年数
6か月 1年
6か月
2年
6か月
3年
6か月
4年
6か月
5年
6か月
6年
6か月

4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

就業規則への規定が、必要になります。

労働者が自ら、半日単位の年次有給休暇を取得した場合は、使用者が時期を指定しべき年5日から、控除できます。

計画年休を導入することにより、消化の促進が図れます。
就業規則による規定と、労使協定の締結が必要となりますが、労使協定を労基署に届け出る必要はありません。


3.フレックスタイム制の改正 [2019年4月1日施行(中小企業も該当します。)]

主な内容

フレックスタイム制の清算期間の上限が、1か月から3カ月に延長されました。

完全週休2日制の下での法定労働時間の計算方法が、労使協定により、清算期間を平均して、1週間当たりの労働時間が当該清算期間における日数を7で除した数をもって、その時間を除して得た時間を超えない範囲内で、労働させることができることとなりました。

フレックスタイム制を、採用する場合に、該当します


4.高度プロフェッショナル制の創設 [2019年4月1日施行(中小企業も該当します。)]

主な内容

労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度。

高度の専門性を有し、職務の範囲が明確で、一定の年収要件(1年あたり1075万円以上)を満たす労働者が対象。健康保持措置を講じ、労使委員会の決議や本人の同意等が必要です。

高度プロフェッショナル制を、採用する場合に、該当します


5.労働安全衛生法の改正 [2019年4月1日施行(中小企業も該当します。)]

主な内容

医師の面接指導のための「労働時間の状況の把握」義務

長時間労働者等に対して適切な健康確保措置を図るため、タイムカードによる記録、パーソナルコンピューター等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければなりません。

 労働時間の状況を把握しなければならない労働者は、高度プロフェッショナル制度が適用される労働者を除き、全ての労働者が対象です。(次の①~④も対象です。)

①管理監督者等(時間外割増賃金の支払い義務のない労働者の含む)
②事業場外みなし労働時間制の適用者、裁量労働制の適用者(みなし時間に基づき、割増賃金を算定する労働者も含む)
③新技術、商品または役務の研究開発に係る業務に従事する労働者
④派遣労働者(直接雇用していない労働者も含む)


医師の面接指導を実施する時間数の変更

法定労働時間(週40時間)を超えて労働させた場合におけるその超えた時間(時間外労働及び休日労働)が1か月あたり80時間を超える時間を算定した労働者から、申出があった場合は、医師による面接指導を行わなければなりません。(今までは、100時間を超えるでした。)

 医師による面接指導の対象となる労働者を把握し、面接指導の申出を促すことも必要になります。


産業医・産業保健機能の強化

産業医に対する情報提供義務
事業者は、産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報(省令で定めるもの)を提供しなければならない。(労働者数、50人以上の事業場)

産業医の勧告を衛生委員会に報告する義務
事業者は、衛生委員会に対し、産業医の行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容等を報告しなければならない。(労働者数、50人以上の事業場)

産業医の業務に関する事項の周知義務

産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務等の内容を、事業場に掲示又は備え付ける等の方法により、周知させなければならない。(労働者数、50人以上の事業場)


労働時間の把握が、強化されました、正しい方法で時間管理を行う必要があります。


6.労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の改正 [2019年4月1日施行(中小企業も該当します。)]

主な内容

勤務間インターバル制度を努力義務条項として規定し、普及を促進する。

勤務間インターバル制度とは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻との間に、一定の休息の確保を図る制度のことをいいます。

時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)が用意されています。(ただし、2019年11月15日受付終了しました。)
勤務間インターバル制度の導入を図るため、外部専門家によるコンサルティング、労務管理用機器等の導入等を実施し、改善の成果を上げた事業主に対して、その経費の一部を助成するものです。


勤務間インターバル制を、採用する場合に、該当します


7.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(いわゆる同一労働同一賃金の導入)[2020年4月1日施行(派遣労働者に関するものも該当)、中小企業は、2021年4月1日施行]

主な内容

同一労働同一賃金の導入は、仕事ぶりや能力が適切に評価され、意欲をもって働けるよう、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

均等待遇 → 通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取り扱いの禁止(パート有期労働法第9条)

①通常の労働者と、職務内容同一短時間・有期労働者である。
②事業所における慣行その他の事情からみて、事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その労働者の職務の内容及び配置が、通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの。

   ⇓

①及び②により、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

     ⇓

待遇に違いがある場合は、同一の待遇にしなければなりません。

※「事業主との雇用関係が終了するまでの全期間」とは、通常の労働者と職務の内容が同一となり、かつ、人材活用の仕組み、運用等が通常の労働者と同一となってから雇用関係が終了するまでの期間であること。すなわち、事業所に雇い入れられた後、要件を満たすまでの間に通常の労働者と職務の内容が異なり、また、人材活用の仕組み、運用等が通常の労働者と異なっていた期間があっても、その期間まで「全期間」に含めるものではなく、同一となった時点から将来に向かって判断するものであること。

均衡待遇 → 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との不合理な待遇の相違の禁止(バート有期労働法第8条)
①業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)
②職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)
③その他の事情(職務の内容と異動の範囲に関連する事情に限定されるものではなく、あらゆる事情を考慮してよい)

     ⇓

①~③により、基本給、賞与その他待遇のそれぞれに差を設けている理由が、その待遇の性質及び待遇を行う目的に照らし適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

     ⇓

待遇について不合理な相違がある場合は、それぞれの不合理な待遇の相違を改善しなければなりません。

※「その他の事情」については、合理的な労使の慣行などの諸事情が想定されるものであり、考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものであること。


事業主の説明義務の強化

雇い入れ時(パート有期労働法第14条第1項)

短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに第8条から前条までの規定により措置を講ずべきとされている事項に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

求めがあったとき(パート有期労働法第14条第2項)

雇用する短時間・有期雇用労働者から、求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由並びに第6条から前条のまでの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

※第6条から前条までの規定により措置を講ずべきとされている事項は、次の通りです。

①労働条件に関する文書の交付等(第6条)
②就業規則の作成の手続(第7条)
③不合理な待遇の禁止(第8条)
④差別的取扱いの禁止(第9条)
⑤賃金(賃金制度)(第10条)
⑥教育訓練(実施する教育訓練の内容)(第11条)
⑦福利厚生施設(福利厚生施設の利用)(第12条)
⑧通常の労働者への転換(実施している通常の労働者への転換措置)(第13条)

※説明は、労働者が的確に理解できることができるよう、口頭により行うことが原則であるが、説明すべき事項を漏れなく記載した、労働者が容易に理解できる内容の文書を労働者に交付すること等によっても、義務を履行したといえる。

※本条の規定による説明により労働者が納得することについては、本条の義務の履行とは、関係がないものであること。


待遇の相違の内容及び理由の説明の内容は、就業規則・賃金規程等の規定の整備が重要です。(相違の明確化)

通常の労働者と、短時間・有期雇用労働者の間には、労働条件の相違があることを前提とし、職務内容等の違いに応じた均衡の取れた処遇を行うことが大切です。